Act...9


「・・・・・・その・・・・声・・・」

メイジャが体を震わせて、恐る恐る振り返る。

そして、開口一番にその口から発された言葉・・・。




「キャンディ!!!!」




「メイ・・・・・・・・・・・・・・ジャ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」

「キャンディ!!!そう!!僕だよ!!メイジャだよ!!」

「メイ・・・・ジャ・・・・・・・メイジャ!!やっぱりメイジャなのね!!!」

メイジャは即座に走り出し、飛びついてきたその少女を抱き締めた。



「・・・・・・・・・・案外、時間はかからなかったみたいね。
・・・・・・・・・・・まあ、何よりだわ。」

その光景を見て、自分でも確かに目元が緩んだのを感じた。



「キャンディ!!本当に・・・・本当にキャンディなんだね!!
・・・・キャンディ・・・・キャンディ!!!」

「うん!!
・・・そう!!そうよ!!私よメイジャ!!」

二人の瞳からは大粒の涙が零れ、頬を伝っていった。

「ずっと・・・ずっと捜していたんだよ!!
ずっと・・・・ずっと・・・!!」

メイジャの声が、涙の精で微かに変わっている。

「私も・・・ずっと・・・ずうっと・・・、
メイジャの行方が気になって仕方なかった!!
逢いたくて逢いたくて堪らなかった!!」

少女・・・・もとい、キャンディの声も同じだった。



「キャンディ・・・もっと・・・・もっと良く顔を見せて。」

メイジャはキャンディの頬を両手で覆い、
ゆっくりとその顔の一部一部を見つめる。

「・・・・うん!!うん!!」

「随分と姿が変わってしまっているけど・・・でもやっぱりキャンディだ。
他の何者でもない、キャンディ・・・・たった一人の僕の妹だ!」

「メイジャ・・・・。
メイジャ自身の優しい香り・・・・・凄く凄く覚えてる・・・・・。
懐かしくて・・・・とても落ち着く・・・。」

互いの顔は、涙と同時に最高の笑顔も零れていた。



「もう・・・絶対に離れたくない・・・・。」

「私もよ・・・メイジャ・・・・。
もう一人になりたくない・・・・。」

メイジャは、キャンディをギュッと抱き締めると、
暖かな笑顔でもう一度言った。

「おかえり。キャンディ。」

それをとても優しい眼差しで見つめたキャンディも、
メイジャに体を預けながらゆっくりと言葉を紡ぐ。



「・・・・・・・・・・ただいま。メイジャ。」



二人の念願の再開は、あれだけ堪える寒さの雰囲気を一気に翻し、
穏やかな温もりをその場に残した。




「・・・・・・・・一段落・・・・ついたかしら?」

ペイの切り出しで、
二人がはっとして、こちらを振り向いた。

「あ・・・っ!!
ペイ!ご、御免ね!!」

焦ってキャンディを離すメイジャ。

「"御免"はもう言わない鉄則じゃなかったかしら?」

「ああ〜〜〜本当に御免!!
・・・あ!!また!!」

かなり慌てているらしいメイジャを見て、
ペイは、また笑みをもたらされそうになった。

「本当にアンタを見てると調子狂わされるわ。
・・・・・・いいわよ別に。
逢えるかどうかも解らない。
それでも懸命に捜した妹でしょ?
感動に打ち震えるのは当然の事だし、報われて良かったじゃない。」



「ペイ・・・・・・・・・・・・・本当に・・・・・・本当に有り難う。
感謝してもしたりない。」

メイジャの目頭が又、熱くなってきているのが解った。


「何、お礼なんか言ってるのよ。
私は殆ど役に立ってないんだからいいのよ。
それより、そっちのキャンディちゃん・・・?
が、不思議そうにしてるわよ?」

「あ・・・・!
私・・・そんな顔してました!?」

「うん、してたわね。」

「ごっ、御免なさい!!」

反応が本当にメイジャにそっくりだった。



「だから、いいのよ本当に。
兄妹揃って変に礼儀正しいのね。
・・・・・・・・・私の名前はペイ。機械人間よ。
なりゆきでメイジャと共に貴女を捜していた。
人の目の映り方から考えると、私はあまりいい意味で捕らえられないと思うけど、
一応怪しい者ではないわ。」

「あ、はい。メイジャの貴女に対する対応で、
すぐにそんな人じゃないって理解できました。
初めまして、私がキャンディです。
メイジャと一緒に、私を捜していてくれたんですね・・・・。
本当にどうも有り難う御座います。
メイジャの面倒まで・・・・。」

キャンディは、深々と頭を下げて何度も礼を言う。



「顔を上げてくれる?
それにこれはメイジャにも言ったのだけど、
私なんかに敬語なんて使う必要ないわ。
”ペイ”でいいから。」

「・・・・・・・・・・・そんな・・・、恩人に向かって・・・・・。」

「恩人?
・・・そこまで綺麗な存在じゃないわ。
・・・・・・そんな相手に、遠慮はなしじゃない?”キャンディ”?」

業とアクセントを強くして呼ぶと、キャンディが再び微笑む。

「有り難う・・・・・・・本当に有り難う・・・・・ペイ。」

「印象の強い笑顔は、メイジャが似たのね。きっと。」

「え?」

二人が不思議そうな表情をする。



「やっぱり貴方達は兄妹なのね・・・・と感じただけよ。
二人で同じ顔をするから。」

「・・・・・・・・・・そうかな?」

微かにメイジャの顔には照れが見えた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

しかし、メイジャとは対称的に、
キャンディの表情は刹那、嶮しいものと化した。

メイジャは気が付かなかった様だが、
私の目には確かにキャンディの曇った顔が映った。

「・・・・キャンディ?どうかした?」

ペイが尋ねると、瞬時に先刻のキャンディに戻った。

「う、ううん!な、何でも・・・ないの。」

「・・・・・そう?」

”何でもない”というわりには、何だか意味深な雰囲気だったが、
・・・・・・私はあえて深くは、追求しなかった。

「・・・・・・このままじゃ寒さにやられるわね。
私の家に一度引き返しましょう。
話はそれからよ。」



そして、ペイはそのまま二人を促し、元来た帰路へと向かった。







・・・・・・・その時ペイは探索装置をOFFにしていた為、気が付かなかった。

自分達三人を観察する者達の姿に。






退