Act...8


「・・・冷えるね。」


早朝ならではの気圧風に体を奮わせるメイジャ。

「アンタが倒れたりするんじゃないわよ。
取りあえず探知機でこの周辺を徹底的に調べる。」

ペイは手の甲のオートロックを解除し、
中のデータサーバーにありったけのパスコードを入力する。



「大体、この周辺の順路は割り当てる事ができるから、
運が良ければ今日中に手掛かり位は掴めるわ。きっと。」

「あ、この方角に関してはもう少し突き詰める事出来るよ、
僕。少し触れてもいい?」

「・・・ええ、構わないわ。」



そう言って弄り始めたメイジャは、
ペイの想像以上に、この手の軽度機械に精通していた。

流石にそれなりの段階を踏んで、経験を積んでいただけある。
手捌きも大したものだ。

「少し空調が濁っているのが難点ね。」

「うん。
でも雨天だったり、
雷鳴が発生するに比べたらまだいい方だよ。
悪天候な気象は、それだけ機械に反発を起こしやすいからね。」

「・・・ええ。
・・けれど、やはり拡散されてるわね反応が。」

「機械人間の多発は戦争後、特に広まったからね。
当事地であるこの場では、余計に絞り憎いかも知れない。」

「・・・手がかかりそうね。」

「衛生上で探求した時は データが数え切れない程あったから、
荒廃した土地を縮小する事は、
そんなに手が掛かる事でもなかった。
期日はかなり必要だったけれどね。」

説明調にメイジャが整理していく。



「・・・未知数・・・的可能性ね・・・。」



「それを狭くしていかないと・・・でしょ?」

こちらに首を傾けるメイジャ。

「違いないわ。」

「ただ・・・正直、僕はあまり機械を学んでいた頃の
そのものの環境を、覚えていないんだ。
だからこうして、自分がその性質だけをこうやって語っている事に、
多少矛盾を感じていたりもする。」

「矛盾?」

「うん。
誰と関わって、何を話して、
どうやって通っていたのかもあまり鮮明には解らない。
ただ、キャンディが傍らで僕を支えていて くれた事だけは確かなんだ。」

「・・・そう。」

メイジャの淡々と話す姿勢に、
ペイは少々関心を持って聞き入った。



ペイも、大げさなものではないが、
過去のある部分、部分が正直的確に感知していないからだ。



その感情に囚われていた、その時。

「・・・!!」

「・・・・ペイ!!生体反応が出てる!!
キャンディの気質に反応してる!!」

「・・・・でも、人間の潜在表示と明らかに反応が違う。
どちらかと言えば・・・メイジャ、貴方より私の型・・・・。」



「・・・やっぱり・・・キャンディは・・・」

言い方と、表情を瞬時に理解したメイジャが、
ペイから手を離し、少々考え込む。

「・・・私より新規型(リニューアルタイプ)かしらね。」

メイジャの肩を軽く叩き、呟く。

「”人間”にも”機械”にも隔てなんてないよ。」

穏やかな笑みで、ペイに答えるメイジャ。



「アンタの考えはそうだったわね。
・・・・反応した場所へ急ぐわよ。
近付くにつれて、気圧やコードが強度を増す。
きっともう近いわ。」



「・・・キャンディは生きているんだね。」



上着を握る手に、力が入っているのが理解出来る。

「発見するまで何とも言えないけれど、
取りあえず大いにその可能性が高い。」

「うん!!」

メイジャがペイの手を強く握った。

・・・そしてまた最初に出会った時の様に叫び始めた。

「キャンディーーーーーーーーー!!!
キャンディーーーーーーーーーーーー!!!」



今回の声はあの時の様に、微かな弱みや心細さがない。

ペイが視界専用の赤外線センサーの、
カウンター表示度合を更に細かくし、
メイジャはその方角、周辺に必死で音を伝える。



"・・・・・・・・・・・・どうか・・・・・・・・響いて。

そして・・・・・・・・届いて。

貴女を待つ人間が・・・・・・ここに存在するのだから・・・・"



超音波の様な波動が、私の頭脳探知機に共鳴する。

一線を引いた様な・・・・・一歩間違えればその音に機能を破壊されそうな程の強い振動。

中心の枠を捕らえる為に、近地に侵入する人間、機械、全ての言動を削除させ、
微かに範囲に侵入を試みる者にのみ意識を集中させる。




・・・・・・・・・・・暫しの静寂の後。






『核心の糸をを掴んだ』














「・・・・・・・・・・・・・・・・・・誰?」














ペイ達の背後から、微かに消え去りそうな声が浸透した。



退