Act...7


「ペイ・・・!起きてる?」

それは、毎日を同じ様に繰り返した3日後の早朝の事だった。




「・・・・起きてる。朝から何?」

一度、外の空気を吸うと書き置きして出ていったメイジャが、
バタバタを忙しく音を立てて部屋に戻って来た。

相変わらずキャンディの行方は、
明確に定まらないままではあったのだが・・・。



「五月蠅くして御免!!
・・・でも、これ見て!!今、ドアに挟まってたんだけど!」

ペイハメイジャから、何やら白い封筒を手渡された。

「・・・手紙?」

「中を見て。」

促されるまま、ガサガサと封を開く。

「・・・・!?」

中の内容はとても簡潔な物だった。




「"お前の妹のキャンディが逃げた。
周辺まで来ている。
早急に探し当てて欲しい"・・・」




ペイが声に出して読むと、メイジャが難しい表情をしている。

「・・・・・これ、多分前から僕宛に届けている人だと思う。」

「・・・・相変わらず宛名が不明ね。」

封の裏を確認して見ても、書かれてある形跡がない。

「一体どういう事なんだろう・・・。
この人・・・キャンディの行方を知ってるみたいだけど・・・。」

「・・・そうね。
前回の内容といい、今回のものといい、
関連性がありそうな内容だし。

・・・・でも何か引っ掛かるわね。」

「・・・うん。」

同じ思いを感じていたらしいメイジャが、ペイの意見に賛同する。



「キャンディが・・・・<逃げた>・・・っていうのは何なの・・・・?」

「解らない・・・。
でも、そうなるとキャンディはこの手紙の差出人の元に、
一緒にいた・・・って事になるよね?」

「・・・ええ。
・・・そして何か理由があってそこから離れた・・・みたいな感じだわ。」

「キャンディ・・・何か危険な場所に・・・いるのかな・・・。」

メイジャは流石に疑心を隠せないらしい。

「”向こう”もキャンディの存在を何とかして捜索している・・・?
しかも私達の身近に来ている様な物言い・・・。

そもそも、この手紙を何故私の元へ?
メイジャが此処に来ている確証はない筈じゃ・・・。」



「・・・・!?
待って!もしかしたら・・・。」

メイジャは此処に来る為、持参してきた荷物を急にひっくり返し、
中の物を全てその場に広げた。

「メイジャ・・・?どうしたの?」

「ペイ・・・。
もしかしたら、僕は此処に来るまでの行動を、
その手紙の人か、もしくはそれ関連の人に、
ずっと、監視されていたかも知れない。」

「監視・・?何を言ってるの・・?」

「あった。
一枚目の手紙・・・。」

「この手紙がどうしたの?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やっぱり、奥裏に極小のセンサーが付いてる。」



「そのセンサー・・。
私も見た事があるわ。
超小型の音声、距離感覚を拾う、高性能のものでしょう?」

「うん。
・・・しかも、これは僕が、
以前、学科修養館で使用していたセンサーの最新の物だ。
もの凄く薄くて、軽い目の付きにくいものだよ。
・・・・ずっと何も気が付かないで持ち歩いてたなんて。」

「それは、私の体内にも取り付けられている一部でもある。
・・・・でも待って。
何故、メイジャ、・・貴方を監視する必要があるの?
学科修養館は貴方が居た場所なの?」



「学科修養館は、
いわゆる普通の学校の制度を、
あらゆる科学技術指向に変更したものなんだ。
僕は幼い時からキャンディと共に、通っていた。
世界大戦が勃発してからは、その地も崩れてしまったらしいんだけど。
でも・・・そうすると、そこが関係してる事に・・・?」

「アンタの妹が一緒・・・となると・・・・・・意味深ね。
メイジャ、とにかく此処で考え込んでばかりもいられそうにない様だし、
危険にさらされたりしていたらまずいわ。」

「うん。」

「どうやらこの近地域にいる様だから、
捜索開始した方が良さそうね。」

「・・・そうだね。」

きりっとした表情で、席から立ち上がるメイジャ。

「とにかく、そのセンサーは処分した方がいい。貸して。」

「どうするの?」

ペイは手渡されたセンサーに、体の高圧電流を流し込み、
解体して自分の腕にセットした。



「・・・凄い。」

「最近、改良し直してなかったから、いい材料になったわ。
これで中の自動機器も反応しなくなる。」

「有り難うペイ。
一刻も早くキャンディを捜さないと・・・。」

「・・・何故だか・・・あまりいい追い風ではないようだけど。」

「うん・・・。
でも、それでも僕は行かないと。
・・・・・キャンディが待ってるかも知れないから。」

「・・・付き合うと言ってしまった矢先、・・仕方ないわね。」



「・・・あのね、ペイ。
一つ言っていなかった事があるんだ。」

「何?」

「キャンディは・・もしかしたら、
君と同じ人間機械になっているかも知れない。」

「・・・?・・何故そう思うの?」

「・・・衛生を送った時、
あまりに探知の的が絞られるのが早過ぎたんだ。
電子機器が組み込まれているものは、反応が早いから。」

「成る程・・・ね。
・・・でもアンタの気持ちは変わらないんでしょう?」

「うん、勿論!
今は一刻も早く発見したい。
行こう、ペイ!」

「・・・言われなくとも。」



ペイはメイジャと共に、即座にその場を後にした。



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