Act...26
男達は、自然な態度のまま、それに答える。
「・・今すぐ私達は彼女を連れて行かなければいけません。
一刻も早く彼女の無念を晴らす為にも。」
「・・・白々しい芝居はそのくらいにしたら?」
ペイの厳しい視線を見て、三人は足を止める。
「・・・・・。」
「押し黙る事。
それは僕の思考の中では、『肯定』って事になるけど?」
「貴方達は・・貴方達は本当にシスターに頼まれて来たの?
もしそうじゃないのなら・・違うのなら真実を話して!」
ヘヴィレスとメイジャも、ペイの言葉を後押しする。
・・・暫くその場に沈黙が続いた。
だが、その三人の内の一人が小型マイクを取り出した事で、
事態は動きを見せた。
その男がマイクに向かって台詞を放つ。
「・・・だそうですよ?シスター。」
「!?」
私達の体に衝撃が走った。
この時点で明らかになった事実。
【シスターはこの三人と面識がある】
『ま・・・待って・・・・待って・・・お願・・・・・っ!』
ガガッと機械音に阻まれながら、シスターの声が聞こえた。
懸命に何かを訴えている様子だった。
「・・・・一体どういう事なの?」
ペイが重々しく口を開く。
「どうやらシスターが何か絡んでいる様だね。」
「何で・・・なんでシスターが・・・・。」
ヘヴィレスの台詞を聞いたメイジャの表情が、
みるみる青くなっていく。
「メイジャ!」
「!!」
その様子を見たペイが、
メイジャに向かって叫ぶ様に台詞を放った。
「まだ確かな事は何も解っていないわ。
・・・・・・よく聞いて。シスターが何か伝えようとしてる。」
ペイとヘヴィレスが独自の機能で、
その台詞の内容を探知しようとしたその時。
「・・・ハハハ!・・・成程。
やはりシスターと貴様等の関係は大きい様だな。
・・・・まあ、粗方予想通りではあったが。」
遂にその男性三人の本性が、ペイ達の目に映った。
「・・・本当に。
探知に鋭い所は流石機械人間と称するべきか。
・・・・・・我が『研究所』でも大いに使い道を活発にしていきたいものだ。」
「研究所・・・・!!」
ペイはその台詞で核心を持った。
この目の前の人間達とは明らかに敵対すると。
「貴方達はやはり研究所の人間だったのね・・・。」
「御名答。・・・残念な事だ。
このまま事が進めば、全て『あの方』の思い通りだったのに。」
男達は、ペイの疑心を嘲笑うかの様に、
嫌な微笑を浮かべる。
「・・・どうやら上手く手掛かりにぶつかった様だね、ペイ。」
「ええ、ヘヴィレス。アンタの言う通りだわ。
・・・・・研究所の人間には聞きたい事が山程あるのよ。」
「どうして・・・どうしてキャンディを・・シスターを・・・。
・・・・・僕の大切な人を巻き添えにするの!!」
ヘヴィレス、ペイ、メイジャが研究所の者達に問い詰める。
それを予想の範疇とでも言う様に、余裕で答える男達。
「・・・この女は私達の件については例外だ。
今の私達に用があるのは・・・・その少女の遺体だ。」
「・・・シスターは無関係?・・・用があるのはキャンディの体?」
「ああ。・・・まあ多少憶測は外れたが、お前達の処分は変わらん。
現状が悟られた以上、どの道ここで死んで貰う。」
「!?」
そう言ったのと同時に、男達は武器をペイ達に向ける。
ペイはメイジャを咄嗟に庇う体制になる。
「・・・ほお。やはり抵抗するか。
・・・面白い。どうせ意味は持たないだろうが冥土の土産に教えてやる。
・・・・・このシスターはな、お前達の居場所を突き止める餌だ。」
男の一人が、業とシスターに声が届く様に、
小型マイクを傍に持って話を続ける。
『や・・・やめて・・・メイジャ達・・・・に・・は・・・・』
途切れ途切れにシスターの声は続く。
「餌・・・?餌ってどういう事!?」
メイジャが詰め寄ると、男は虎視眈々と答える。
「・・・そのままの意味さ。
つまり、この女にはこう言ってやったのさ。
『神を尊いと称える者が、人様を犠牲にするには大いに抵抗があろう』とな。」
「もしや・・・!戦渦で傷付いた人や、教会信者達を人質に!?」
「・・・その通り。」
「この・・・・卑怯者!!」
嘲笑う表情のまま話し続ける男達を睨み、
怒りをぶつけるペイ。
その時。
「許さないっ!!」
メイジャが隙を付いてそれに詰め寄り、研究所の者達に向かった。
「メイジャっ!駄目っ!!」
「無理だ!やめろ!」
ペイとヘヴィレスがメイジャに向かって叫ぶ。
地を揺らす銃声が、大きく一発鳴り響いた。
ペイは思わず目を閉じ、顔を背ける。
『キャンディが打たれたあの時の音と同じ』
ペイの心中に、その言葉が深く突き刺さった。
・・・・・だが。
「あ・・・・・あ・・・・・。」
恐怖に声が出なくなった様な、微かな声がした。
・・・メイジャの声そのものだった。
「メイジャ!!」
ペイとヘヴィレスはメイジャに即座に駆け寄った。
「・・・・仕留め損ねたか?」
「・・・いや、『あの方』の一報だ。・・・運のいいガキだ。」
「すぐに少女の遺体を連れて戻れとの事だ。行くぞ。」
研究所の者達は足早にヘリに乗り込むと、
ペイとヘヴィレスの反撃を上手く遮り、
すぐに陸から放れて行った。
「ペイ!距離感が掴めない。これ以上は無理だ!」
「・・・くっ!」
強い閃光が放たれ、視界を塞がれた時、
ヘリはもう音だけしか残していなかった。
「キャンディ・・・が・・・・また・・・どうして・・!!」
メイジャは先程微かに翳めた風圧で、少し血が流れていた。
そして、滴り落ちてくる涙と混ざり合い、地に落ちていった。
退 進