Act...25
・・・・・・・・そうして、最善の注意を払い、一時間程度経過した頃。
どこからかヘリの音が、ペイ達の耳に聞こえてきた。
「・・・どうやらお出ましの様だね。」
髪の毛を手で支えながら、ヘヴィレスが呟く。
「態々ヘリで登場してくるなんて・・・見事なものね。」
「シスター・・・キャンディの為に・・。」
それに続く様に、ペイとメイジャがヘリの様子を見解する。
大きな風力と共に、ヘリが着陸をする。
・・・すると、中から三人の男性がハッチを開けて出てきた。
「貴女方が、連絡相手の方ですね?
シスター・アロワから指示を受け、参上致しました。」
「はい。どうも遠い距離を有難う御座います。」
メイジャがその男性達に向かって、頭を下げ礼をする。
しかし、それが聞こえなかったのか、
その男性達はそのままメイジャの横を、無言のまま通り過ぎた。
「キャンディという少女の遺体はどちらでしょうか?」
「え・・っ!あ・・あの・・・。」
メイジャは会話の不意を突かれて、言葉のタイミングに焦っていた。
「遺体ならこっちにあるよ。」
まるでメイジャをフォローする様な形で、ヘヴィレスが答える。
「そうですか・・・・・ん?」
すると、突然男性の一人が、ヘヴィレスの顔を見て動きを止めた。
「何だい?・・・人の顔をジロジロ見て。」
「あ・・貴方は・・・。」
「・・・・・・僕は男に見られるのを、好む趣味はないが?」
相変わらずの口調で話すヘヴィレスだが、
何やら相手の視線が疑わしくなるにつれ、
苛々する様にもう一度聞いた。
「一体何だというんだ?」
すると、その男はハッとして小さく呟く。
「・・・いえ。すみません。人違いです。」
謝罪を一言すると、
その男はそそくさとキャンディの遺体の方へ向かった。
そして、何やら他の二人と密談を始めた。
そこでペイがヘヴィレスに話し掛けた。
「ちょっとヘヴィレス。・・・何か苛々してない?
明らかに表情が変よ?」
「・・・気に入らないね。
ああいう「人間そのもの」を贅沢に持っている癖に、
立場というものを弁えない奴は。」
「ちょっとどうしたのよ。
仮にもシスターに関与する人に対して・・・。
何かあったの?」
「さあね・・・。
人の顔がそんなに珍しかったのかと尋ねたくなっただけさ。」
「顔・・・?
知り合い・・・だったとか?」
「もうその質問は聞きたくない。
・・・僕は知らないと言っている。」
「でも・・・ヘヴィレスアンタ、随分人に反応されてない?
シスターの時といい・・・今といい。
しかもあの男性はやたら動揺してたみたいだし。
本当に面識ないの?」
「あんな一度見たら忘れもしない様な顔の作りの奴、
記憶にも残っていない。」
「あ・・・・そう。」
ヘヴィレスは余程勘に障ったのか、
いつも以上の毒舌で話を切り上げてしまった。
そのすぐ後の事だった。
メイジャがペイの背中側から、服を掴んで呼んだ。
「ねえ・・・ペイ?」
「・・・?どうかしたの?メイジャ。」
「何か・・・あのさ・・・・僕・・・何か恐いんだけど・・・。」
「恐い・・?」
「うん・・・。」
「恐いって・・・何故?どういう事?」
微妙に顔色が良くないメイジャを見て、
不思議に思ったペイが、その内容を尋ねる。
「・・・・あの・・・キャンディの遺体・・運ぼうとしてる人達の事。」
「あの人達が・・・?どうしてそう思うの?」
「あ・・いや・・・その。
シスターの所から直々に来た人達だから、
あまり疑いたくはないんだけど・・・。」
メイジャはちらちらと男性達を見ながら、
自信のなさそうな物言いをする。
「メイジャ。・・・言いたい事は言っていいのよ?
・・・・一体何が気になっているの?」
「・・・・うん。
あのね・・・ふ、服装・・・とか。」
「服装・・・?」
メイジャに言われ、
そのまま男性達に視線を移すペイ。
「・・・・・・!」
ペイは、すぐにメイジャの言いたい事が理解出来た。
・・・・確かに一見、『シスターの連絡の後』だった事から、
そのまま安心してキャンディの遺体を任せていたが、
メイジャの言う通り、明らかに服装に違和感があった。
白衣らしきものを三人共着用している為に、
すぐには気が付かなかったが、
白衣の胸ポケットや腰のあたりに、
いかにも戦闘馴れしているかの様な拳銃や小型のサブマシンガン等が、
ちらちらと見え隠れしていたのだ。
・・・何故神に遣える者に頼まれた人が、
あんな殺人を犯すかの様な道具を持っているのだろうか?
「ペイ・・・!この人達やっぱり・・・変だよ!」
「ペイ・・・。
メイジャと共に気付いているだろうが、
メイジャの妹の遺体、本気で彼等に預けるつもりかい?」
メイジャに続き、ヘヴィレスまでもが意見に同意する。
「・・・・・。」
ペイは、自らの判断と二人の意見を信じ、
事実を明らかにする為に決断をした。
「・・・・・・・そこの三人。・・・待ちなさい。」
ペイは、男性三人に向かって、きっぱりと静かに言い放った。
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