Act...22
「メイジャ、ちょっと代わって。」
ペイは焦っているメイジャから、電子機を奪う様に取った。
「落ち着いて下さいっ!!話を聞いて!!
貴女はメイジャの大切な存在なんでしょう!!」
ペイが怒鳴りつける様に言葉をぶつけると、
一瞬相手の反応がなくなった。
そして、またか細く声が聞こえる。
『どちら・・・様・・・ですか・・?』
少しばかり、留まった様だった。
「・・・いきなり大声をあげてしまってすみません。先に謝罪します。
私はペイ・マシェンダと申します。
今、訳あってメイジャと共におります。
決して怪しい者ではありません。」
『ペイ・マシェンダ・・・・さん?』
「はい。
大戦後に偶然メイジャと会いまして、
妹さんであるキャンディを、一緒に捜索していました。
私にも諸事情がありまして、
考えが一致した為に行動しておりました。」
『そう・・・・なのですか・・・。』
納得したのが解ると、メイジャがペイの横から顔を出した。
「シスター・・・、シスター聞こえる?
・・いきなり・・あんな事になって・・話すのも突然になっちゃって・・・。
本当に御免なさい・・。
でも・・・キャンディが・・・亡くなったのは・・・事実なんだ・・・。
今・・・・傍に・・・・遺体がある。」
重々しいメイジャの口調から、
ペイもヘヴィレスもお互いに出る言葉がなかなか思いつかなかった。
『・・・・・・。』
それは勿論、相手方も同じの様だ。
「・・ペイ。
あとヘヴィレスっていう男の人もいる。
この二人を誤解しないで。」
『・・・え?』
一瞬、ペイは空耳かとも思ったが、微かにシスターは何かに反応した。
ヘヴィレスを見ると、どうやら彼も何か気付いた様だ。
しかし、それはメイジャが続いて話していく内容に、掻き消されていった。
「この二人は本当に悪い人じゃないんだ。
今は仲間の様に僕は思ってる。そんな人達。」
メイジャからその言葉を受けたペイは、この時酷く驚いた。
逆に、共に行動する事を許されたヘヴィレスは、
さも当然と言う顔をしてはいたが。
先程も思ったことではあるが、
やはりメイジャの他人に対する感覚は、どうも自分とは対称的だ。
まだ、出会って間もない、自分に対して害になるかも解らない存在を、
こうも簡単に自分の範疇内に収めてしまう。
自らだったら決してこうはいかない。
むしろ全くの逆である。
ペイは自分に接してくる存在に対しては、
第一印象全て抜きにして、まず疑う事にしていた。
「敵」であると判断する人材がとにかく多いからだ。
特に『人間』にはその感情が特に敏感になる。
自分自身も元は人間であったにも関わらず、
ペイはそれさえも批判するかの様に今を形成している。
だからこそ、メイジャの存在はとてつもなく『意外な人種』として映っており、
ペイを「仲間」と認識するその思考に驚きを隠せなかったのだ。
しかし、そのメイジャ的な考えは、即座にシスターに伝わった。
「・・・そうなのね。
・・・・・・いきなり取り乱してしまって私の方こそ御免なさいメイジャ。
・・・・・・・私なんかよりも・・・兄である貴方の方が、
・・・よっぽど辛い事実であった筈なのに・・。」
「・・・ううん、いいんだシスター。・・・・気にしないで。
・・・・それでね、あの・・こんな事頼むのは・・何なんだけど・・。」
メイジャが言い憎そうに言葉を濁す。
ペイがその遠慮は無用だと言おうとしたその時。
「・・悪い事ではないんじゃないかい?」
先に口を開いたのは、意外にもヘヴィレスだった。
ポカンとしているメイジャは、視線だけヘヴィレスに向ける。
「君が、そのシスターとやらに頼もうとしている事は、
そんなに遠慮をしなくてはならない程、悪い事かい?
そこまでして、君はその相手に気を使うのかい?
そんな判断がいい子を演じているとでも?」
相変わらずの口調で一気に話し続ける。
「・・・・たまには、人に甘えても罰はあたらない。」
最後にそう言って。
「・・・ヘヴィレス。」
「・・・・・アンタもなかなか言う時は言うのね。」
「まあ、一応『仲間』扱いされた期待には、それなりに答えないと。」
ヘヴィレスはにやりと笑む。
それと同時に、メイジャもペイ達二人を見て、柔らか表情になった。
まだ、何処か寂しげではあるけれど。
「さ、メイジャ。」
「うん。シスター・・・あのね、聞いて貰える?」
『ええ、メイジャ。何かしら?』
「キャンディの・・・遺体の事なんだけれど・・・・。」
メイジャが強く拳を握った。
「シスターの元で・・・どうにかして保管しては貰えないかな・・・・・?」
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