Act...21
「メイジャ」という一人の存在に会ってから暫く、
ペイは何故だか不思議と考える事があった。
どうしてか・・この豊かな表情を幾度と目で追っている自分が此処にいる。
前にもこんな事があった様な・・懐かしさ・・。
そして、何処かで何かが引っ掛かっている様な・・曖昧さ・・。
とても解読し難い気分に捕らわれる事が多々ある。
自身でも理由が見当たらないだけに、納得の仕様がない。
けれど、何かが訴える自らの中の意識。
それは『感情』だけに嵌められない・・もっと大きなもの。
訴え続けるそれを判別しているのは・・まだ勘程度のものに過ぎない。
だが、良く考えてみれば私はメイジャの事を、
素性から性格から未だにあまり良くは知らない。
家族構成や、年齢くらいは多少なりと理解出来るものの、
行き当たりばったりで共に動き始めた為に、
はっきりとした「メイジャそのもの」を完全には理解できていないのだ。
それはきっと、メイジャを筆頭として、へヴィレスも含めて、
この二人から映る「自分そのもの」の形も同じ事だろう。
相手の事を完璧には理解し得ていないのに、
まるでそのレートに導かれた様に進む現状。
本当に不可思議なものである。
「ペイ・・。」
先程の嬉しさとはうって変わったメイジャの寂しげな声に、ペイは我に返った。
「・・・シスターに・・伝え・・ないと・・だよね。」
か細くなるメイジャの声。
聞かずとも、それが「妹の死」についての事なのは理解出来る。
「もし・・話すのが無理なら・・私が代行しても構わないわよ。」
ペイがメイジャの背丈までしゃがみ込み、正面を向いて伝える。
しかし、メイジャは首を横に振った。
「ううん・・、いいんだ。
これは、僕の・・兄としてのけじめでもある。
大丈夫。声は・・もう出るから。」
そして、そう言いながら笑う。
今にも崩れてしまうのではないかと思わせる様な、
脆さを兼ね備えるかの様に。
「・・・解ったわ。」
そう言ってペイは、メイジャの背中を軽く押した。
へヴィレスも、先程までの口数の多さはなく、
ただ、メイジャを見つめている。
そのまま、メイジャは切り出した。
「シスター・・。御免。
今から・・とても驚くことを言うけど・・・心して・・聞いて欲しいんだ。」
『メイジャ・・・?・・・どうか・・・したのかしら・・?
とても・・声が重そうに聞こえるわ・・。』
どうやら、向こう側から聞いているシスターと呼ばれる彼女にも、
メイジャの心情が伝わっているらしい。
「・・・・・・・あのね・・キャンディが・・・妹がね・・・。」
『キャンディ・・・?メイジャの妹のキャンディね?
良く覚えてるわ。
あの子が一体どうしたの・・?』
何かを察したのか、声に静けさが伺える。
「キャンディが・・・・・・・・・・殺されたんだ・・・・。」
『え・・・・・?』
どうやら、瞬時にはその言葉を受け付かなかった様だ。
・・・それも当然の話だろう。
シスターにとってメイジャが可愛い存在であったのなら・・恐らく・・キャンディも・・。
『メイジャ・・御免なさい。良く聞こえなかったわ。
・・・・もう一度言って・・?キャンディが・・何・・?』
・・・・声が明らかに震えている。
「キャンディが・・何者かに・・・殺されたんだ。
・・・嘘でもなんでもない・・・。」
『殺・・・・され・・・た・・?』
「うん・・・。」
メイジャの肩も、シスターの声同様に震えている。
ペイはそのまま、右手でメイジャの肩を支えた。
「本当に・・・お優しい事で。」
へヴィレスもあえてそれだけ呟くと、その場面に背を向けた。
『殺・・・・・された・・・・?殺され・・たの・・?
・・・・・キャンディが・・?嘘でしょう・・・?
・・・・嘘でしょう!?メイジャ!!
冗談でしょう!?何かの間違いでしょう!?』
「シスター・・!?シスター!!
しっかりして!!僕の話を聞いて!!」
状況を飲み込めないシスターは、
動揺を隠せない様に声を荒げ始める。
それと同時に、メイジャが懸命に訴えかける。
『答えてメイジャっ!!・・何かの嘘なんでしょう!?
私と・・・久しぶりに私と話をしたから・・驚かせようとしてるだけなんでしょう!?
答えて、メイジャ!!』
それでもシスターはパニック状態から戻らない。
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