Act...20
ペイは一旦それを不思議に感じたが、
そのままパスワードを打ち込み続けた。
「・・・メイジャ。」
何やらヘヴィレスがメイジャを呼んで、
何かを話している。
遠目にそれを見ていると、
何やらメイジャが顔を赤くして帰って来た。
「どうしたの?メイジャ・・・顔赤いわよ?
大丈夫?熱でもあるんじゃ・・。」
「う、ううん。大丈夫!!」
「なら・・ヘヴィレス・・・・アンタ何かしたの!?」
ペイはきつい眼差しで、ヘヴィレスを睨む。
「いや、別に・・?
只、純粋だなあと思っただけだよ。」
「純粋?」
「人間の気持ちの感覚も、
なかなか興味深い事を知ったのさ。」
得意げに笑うヘヴィレスを余所に、
メイジャは赤い顔のまま、俯いている。
「メイジャ・・?本当に大丈夫?」
ペイは一瞬、チップを弄る手を止めて、
メイジャの額に自らの手を当てた。
「わっ・・・・わわわっ!!」
その途端に、メイジャがザザっと離れる。
「メイジャ・・・・?」
ペイが尋ねると又、
更に真っ赤な表情で必死に謝るメイジャ。
何故だか背後でそれを見て、
笑いを堪えているヘヴィレス。
・・・・・・・訳が分からなかった。
するとヘヴィレスがペイの耳元で小さな声で、
「君はまだ気付いてないみたいだね」
と、さり気なく言い放って、
メイジャの頭を面白そうに撫でていた。
「これは、僕にも見込みがありそうかね。」
などと微かに言葉を漏らしながら。
・・・・・・暫くして文字のインプットが終了した。
そのすぐ後に、雑音が多少入ったが、
途切れがちに音声が明確に捕らえられる様になった。
「・・・・・・・・どちら・・・様ですか・・?」
「どうやら・・上手く繋がったみたいね。」
手間がそんなに掛からず成功出来た事は、
それなりに自らの安堵感になる。
ペイの躰の中の影響には特別に事が起ころうとも、
多少の事は考慮する事が可能だが、
メイジャの目的の鍵が回らなくなる事に関しては、
それはそれで納得がいかないらしい。
箇所箇所で躓いてばかりいるのも、
出来るだけ避けて通りたい所だと考えていた。
『・・・・・もしもし・・・?』
向こう側からは、
穏やかそうな女性の声が聞こえる。
どうやらこちらの返答を待っている様だ。
「この声は・・・・・やっぱりシスターだ!!」
メイジャが急速に、大きな声を上げた。
「この人が・・・メイジャの言っていた人・・?」
「そう!間違いないよ!!
シスター!シスター!聞こえる!?」
メイジャが、一生懸命に電子機器に向かって喋り続ける。
『・・・・え?・・・・・・・その声は・・・・何処かで聴いた様な。
・・・・どちら様・・・ですか?』
「僕だよ!僕!!幼い頃にそっちに通っていた!!」
単部的に言葉の一部しか答えていないメイジャに、
仕方なさそうにヘヴィレスが助言した。
「落ち着きなよメイジャ。
まず自分の名を先に名乗るべきじゃないのかい?
・・・・話はそれからだ。」
「あ、そうだね。・・・御免シスター。
僕、メイジャだよ?僕の事覚えてる?」
『・・・・・・・・・・・』
「シスター?僕だよ?忘れてしまった?」
メイジャが再びシスターに問うと、微かな間が生じた。
しかし、すぐにシスターの声が感極まりない物へと変わった。
『・・・メイジャ?メイジャ・・・なの?
・・・・・本当に・・・・・メイジャ?』
恐る恐る尋ねて来るシスターに、
ゆっくりと理解させる様にメイジャは口を開く。
「うん!僕だよ!・・・良かった・・・。
忘れないでいてくれたんだね・・・。」
『メイジャ・・・・・メイジャなのね・・・・。
久しぶりに・・・とても久しぶりに聞く声だわ・・・。
元気なのね?無事に生きていてくれたのね?
良かった・・・本当に良かったわ・・・。』
シスターは少しずつメイジャの声に実感を覚えて来たらしく、
その嬉しさのあまりすすり泣く声が聞こえた。
その声を確かに聞き取れた事に感謝したメイジャは、
ペイに柔らかい表情を浮かべると、
声を出さず、口だけ動かして、<有り難う>と伝えてきた。
それに返す様にペイは、
<どういたしまして>と口だけで伝えた。
退 進