Act...19


「いいや?
残念ながら僕はその"ペイの言う制作者"とやらの存在も、
何故僕等を生き続けさせようとしたのかにも全く興味がないんでね。
情報なんてこれっぽっちも知らないな。」

「・・・・・・そう。
・・・・でもアンタはどうしてその制作者を知ったの?」

「・・・・・・そこまで聞くのはフェアではないだろう?」

また素性の捕らえられない笑い方をする。

「・・・別に特別知りたいわけではないわ。・・・・忘れて。」

「フフ・・・。
どうやら君と僕の辿って来た道は、
あながち外れではないようだね。
正直こんな所で逢うとは思わなかったけど。」

「・・・・・・当たりでもないわ。
・・・相違目的よ。」

横でメイジャが私を落ち着かせる様に、
手で軽く腕を叩いている。

「・・・・・・という事は、ペイは制作者の行方を追っていると、そういうわけか。
・・・・成程。
そしてメイジャ、君はあのキャンディの敵討ち・・・なのだろう?」

そう問われて、メイジャが一瞬肩を揺らした。



「・・・・・研究所・制作者の存在については私が自らの意志で決定した事。
メイジャはキャンディの件もあってそれに同意してくれた。
それだけの事よ。
詮索はフェアではないんでしょう?」

「・・・・・これは失礼。」

恭しくヘヴィレスが手を前に差し出して一礼する。

「今は探り合いをしている時ではないわ。
キャンディの遺体をどうすべきか・・・よ。」

私が再び考える体勢に入った時、
メイジャが何かを思い出した様に話しだした。

「あ・・・待って・・・そういえば!」

「メイジャ・・・?どうしたの?」

「ちょっと思い付いた事があるんだ。」

「思い付いた事?」

メイジャの呟きに、ペイとヘヴィレスの視線が同時に向かう。

「う、うん。あのね、昔、僕とキャンディがまだ小さかった頃に、
良く一緒に遊びに行ってた修道院があったんだ。
そこのシスターが確か・・医学病院の方にも、
手を貸しているって行ってた様な気がして・・・さ。」

「シスター?」

「うん。ほら、前にペイに僕言ったでしょう?
通信衛星を発してくれた人がいるって。」

「ああ!あのキャンディを捜索してくれたっていう・・」

私はメイジャの瞳を見ながら納得した。

「けれど確信はないって事だろう?
しかも、まだその人が修道院に戻っているかも解らないし、
ましてや病院もどうだか・・・。」

その間をヘヴィレスが割って入る。

「アンタは余計な事ばかり言いすぎなのよ。
宛があるなら行動してみるのは当然でしょう。」

「・・・・ま、好きにしてくれたらいいさ。」

ペイが幾ら怒鳴ろうとも、
ヘヴィレスは「我関せず」と言った具合である。

「・・・メイジャ、そこの場所を衛生上での距離で覚えている?」

「うん。大丈夫。」

「なら、これでそこに連絡を取ってみて。」

ペイは、自分の首横のパッチを外して、
電子機械をメイジャに手渡した。

「これは何?」

「簡単に言えば電話機みたいなものよ。
でも構造が少し違っていてね。
・・・えっと確かこの辺りにコンピューター回線が途切れて、
ボロボロになっている映像機具があった筈・・。
あ、あったわ、これね。」

ペイは周囲にあった器具の回線の電波を、
小型マイクロチップの様な電子機械に送り込むと、
そのチップから繋げられたか細い二本のコードを、
自分の耳とパソコンのキーボードの裏に接続した。

「やっと本領発揮・・・という感じだねペイ。」

「余計なお世話よ。」

「・・・・でもこれでどうするの?
僕、連絡するにもパスワード解らないし・・・。
扱いは十分理解できるんだけど。」

メイジャが心配そうな表情で、
機械とにらめっこをする。

やはりこういったあどけなさは少年だと感じる。

「大丈夫よメイジャ。
私やヘヴィレスの様な人間機械には、
ありとあらゆる能力がインプットされてるのよ。
大体、このくらいの事は私の頭脳だったら簡単な事だしね。
悩む事ないわ。」

そんなペイの表情を見ながら、
ヘヴィレスはボソリと呟いて含み笑いする。

「正確なパスワードでないと、
途端に異常が発生するから注意しなよ。ククク。」

「・・・だからアンタは一言余計なのよ。」

低いトーンの言葉の交わし合いだと悟るのが、
何だか悔しい気がした。

「ほら、集中力集中力。
ねえ、メイジャ?」

ヘヴィレスは悪戯っぽく、メイジャに業と話を振る。

「う、うん。
頑張って!ペイ!」

急に話を向けられ、少し焦った動きをするメイジャ。

少し伏せ目がちに私を見る。
・・・何かに躊躇っているかの様だ。





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