Act...12
・・・・・・・・・・・・・・・信じられなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、信じたくなかった。
この世界大戦により、多くの土地に莫大な被害が被り、
更に治安が最悪になった事から、
数々の事件が度々起きている事は耳にしていた。
しかし、そんな崩壊後の状態の中で、
まさかそんな研究所が出来ていたなんて・・・・。
「な・・・・・・何かの間違いではないの?キャンディ。
だ、だってキャンディは現に、
新しいちゃんとした人間の躰をこうして貰ってるわけだし・・・。」
筋の通っている台詞ではあったが、
メイジャの声は少し震えていた。
「・・・・・・・・・残念だけど、
簡単な話なのよメイジャ・・・・・。」
「簡単・・?」
「その研究所の者達のIQ率は、
並みの科学者なんて、
比例する事もおこがましい位に高率なの。
だからそんな頭脳があれば、
どの躰がどの様に働けるかぐらい、
すぐに適材適所させる事が可能なのよ。」
「でも・・器を貰えたんだから・・・。」
「・・・・とりあえず聞いて。
私は運良く作りたての機械だった上に、
必要最低限の殺戮人間に相応しい、
ボーダーライン以下のステータスだった事から、
近場に捨ててある躰・・・・別の言い方をすれば、
研究所の者達が自らの実験材料にする為に殺害した後に、
傷一つ残さない様に修復した躰に、
意識を吹き込んだ・・・・・・そういう事なのよ。」
「・・・・常識範疇じゃないわね。」
ペイは漠然と血の気が引いた。
「役に立たないと解った者は、
人間機械の状態から少しずつステップアップする為に・・・・。」
「嘘・・・・・・・・・じゃない・・・・っていう事なのか?」
キャンディの強烈たる、
強固な説明に必死で耳を傾けていたメイジャが口を開く。
「・・・・正直私も信じられない。
だってキャンディ、貴女はつまり、
その研究所でずっと生活していたって事でしょう?
だったら・・・・・。」
「私だって嘘だって思いたかった・・・!!
世界大戦で躰も心もボロボロに傷付いて、
それでも私は生きられた。
奇跡だと思った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・でも現実は違った。
・・・・・・・そうじゃなかった。
この躰が・・・・・・・・・・・・この躰があの研究所の者達に、
一時は殺されたものなんだから!!」
キャンディの手はメイジャの服をぎゅっと握り、
苦しい想いが伝わってくる様だった。
「キャンディ・・・・・これ以上話すのは、
貴女にとっては非常に苦しい事かもしれない。
けれど、私はその事実をもっと多く知りたい。
私はどうしても、知らなくてはいけない気がしてならないの。
・・・・・・・・・・・・・・・・・お願い・・・・・・・キャンディ・・・。」
「ペイ・・・・・・」
必死の訴えに、
メイジャとキャンディが、同時にペイの表情を見る。
きっと何かを抱えてる事を、気付かれてしまっただろう。
けれど・・・・・・・・・・・・・・・何かを掴まなくてはいけないのだ。
「・・・・・・・・・・・・・・解ったわペイ。
私の知る限り全てを話す。
貴女は私とメイジャをこうして巡り合わせてくれた、大切な恩人。
できる限り、貴女に協力したい。」
「キャンディ・・・・・・。
うん!それは僕も同じだよ!ペイ!」
強く、暖かな瞳でペイの言葉を受け止めてくれる、
幼い少年と少女。
「・・・・・・・・・・・・・・・・感謝するわ。」
その二人に心から礼を送った。
「・・・・・・・・キャンディ。
そもそも貴女はどうしてその殺戮人間に関する情報を、
そこまで詳しく知る事が出来たの?」
「私はその実験の現場を、
ただ見たわけじゃなかったの。」
「見たわけじゃ・・・ない?」
ペイ達三人は一度間を置き、又再び話し始めた。
「・・・・そう。
けれど、それでも充分すぎるくらいだった。
私がその現場を発見し、
恐ろしく逃げたい気持ちを押し込めて生活していた、二日後の事よ。
その夜、どうしても寝付けなかった私は、
禁止されていたんだけど部屋を出たの。
そしたら奥の部屋から何人かの声がした。」
「声・・・?」
「私を手術したファーストドクターが中心となった、
会議の様なものだった。
中からは実験用の機械の音と・・・・・・・・・・・・・・。」
「音と・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・無惨に切り裂かれている、
生身の人間達の悲鳴が聞こえたの。」
「・・・・・・・・・・・・何て事・・・!!」
思わず目を背けるペイに、
メイジャも表情を曇らせる。
「そして当然の事ながら、
私は、逃げたい衝動に駆られた。
でも、一度この研究所に立ち入った者は、
出る事を許されないシステムになっているから。」
「なら・・・キャンディ・・・・貴女は何故・・。」
ペイが尋ねると、涙を少し溜めながら答えた。
「メイジャに・・・・・逢いたい為に・・・・必死で機会を待ったの。」
「キャンディ・・。」
「ここのシステムは、
全てドクター達の腕の刻印を、
ある機械に触れさせる事によって、
オートロック解除される仕組みになっているの。
あらかじめ、そこの入口を管理している者もいる。
だから私は前にさりげなく入手していた薬を、
そこの看守に嗅がせて、意識を遠のかせたの。
いわゆるクロロフォルムね。」
「薬品を・・・使ったのね。」
「心苦しかったけど・・そうするしかなかった。
・・そして、次に外に出る用件で頻繁に研究所を出る、
下級ランクに属す人間のドクターを選出して、
新たに機械になった事で授かった、
高圧の電磁波で、気絶させたの。
それでそのドクターの印を利用したの。」
「キャンディ・・・・・・・・僕に・・・・・・・逢う為に・・・・・・・・。」
メイジャは、再びキャンディを抱き締めた。
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