Act...13
「御免なさい・・・・御免なさいメイジャ・・・。
犯罪要素なのは理解してたの。
でも・・・・でも・・・・・。」
「解ってる・・・・解ってるよキャンディ・・・。
御免。・・御免な。僕が守ってあげられなくて。」
メイジャは本当に、
自分が妹を「兄」として助けてあげられなかった事を、
大層悔やんでいた。
それは、他人であるペイにとっても、手に取る様に理解できた。
キャンディはメイジャの胸の中で、
声を押し殺して泣いている。
ペイは知らず知らずに、
拳を握りしめてる自分に気付いた。
「ペイ・・・。落ち着いて。電波が出てる。」
バチバチと音が鳴っているのは、
自らの掌からだった。
「メイジャ・・・・・・・。」
「え・・・?」
「これから私が言うことを、しっかり聞いて。」
ペイはメイジャの瞳を真っ直ぐ捕らえながら、
ハッキリとした口調で言った。
「・・・・・ペイ?
・・・・・・・・どういう事?」
「私・・・・・・・・・・この話が信じられない。」
「ペイ・・・・・・・・。」
「けれど・・・・・・・・・。」
「けれど・・・?」
「私にはそれが、真実である可能性も否定できない。」
「・・・・・うん。
・・・・・・・・僕も・・・・・僕も実はそう感じてる。」
メイジャはキャンディの髪の毛をゆっくり撫でながら、
静かに言葉を発する。
「メイジャ・・・。」
「キャンディが・・・・やっと出逢えたキャンディが・・・・、
こんなになるまで怯えて・・・・そして震えて・・涙を流してる。
僕にはこれが嘘であるなんてどうしても思えない。
・・・・・・認めたくはないけど・・・・恐らく事実。」
メイジャはそのまま下を向き俯く。
「現実と・・・・・・・・・かけ離れすぎている。
・・・・・でも。」
「ペイ・・・・・・・。
さっきから何を自分の中で考えてるの?」
「え・・・・・。」
一瞬、メイジャの言葉に動揺させられた自分が居た。
「・・・・・・・・・・もし・・・・もし違ってたとしたら謝る。
けれど・・・・もしかして・・・ペイが旅してるのって、
その人間機械である事が関係してるんじゃ・・。」
「そ・・・そうな・・・の?ペイ・・・。」
キャンディが泣いていた表情のまま、
メイジャと共にペイを見る。
「・・・・・・・・・・。」
「ねえ・・・・・・・・?
そうなの?ペイ・・・・・・。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・もう隠せない。
いや、もともと隠す事ではないとは解っていたが。
「そう・・・・・。
メイジャの言う通りよ。」
「!」
「・・・・・・やっぱり・・・・・・・・そうなんだね。」
全てを元から気付いていたかの様に、
口を開くメイジャ。
「正確に言うと、
私は自分を機械として生かした製造者を捜しているの。
別に変わった意味があるわけでなく、
ただ一言の感謝の念の為に。」
「・・・・・・・・・そうだったんだ。」
すると今まで泣いていたキャンディが、
間髪入れずに叫んだ。
「ペイ!でも!
もうこれ以上"人間機械"について、
行き過ぎた関心を持ってはいけないわ!!
もしかしたらペイの躰も・・・!」
「そうね・・・・・・・。
その研究所で造られている可能性が高いわね。」
「キャンディ!」
メイジャが珍しく声を荒げて、キャンディを叱る。
「・・・・・・・ごっ、御免なさい!
・・・・・でも!」
「いいのよメイジャ。
キャンディの言う事も勿論一理ある。
・・・・・・ううん。
そっちの方が、明らかに可能性が大きい。」
「けど・・・!」
「でもね・・・メイジャ。
だからこそ、だからこそ私は・・・。」
「・・・・・・真実を・・・・・突き止めたい・・・?」
ペイが言うより先に、メイジャが答えを述べた。
「ええ。
理解できてるみたいじゃない。」
「でも・・・・・!!やっぱり駄目よペイ!
あまりに危険過ぎるわ!!」
キャンディは必死になってペイにしがみつき、
行動を制する。
「キャンディ・・・・・・。
でも・・・・・・・私はやっぱり知りたい。
その研究所について。
それに・・・・・・・・・・・・・・。」
「それに・・・?」
「もうここまで来ると、
私一人の興味の為だけに動くことは許されない。
これは、これから機械人間が発達していく過程に対して、
大きな重要問題になる。
このままその研究所の者達に、
利用され続ける人種が増えてしまってはいけない。
"生きる可能性"は、
間違った形で進んでは絶対にいけないものよ。」
キッパリと真剣に言い切ったペイに、
二人は言葉を飲み込んだ。
そしてささやかにメイジャが尋ねてきた。
「ペイ・・・・・・・・・。
死ぬつもりじゃ・・・・・・・ないよね?」
「・・・・・・・・・・当然よ。
演技でもないわ、メイジャ。
でも、私の命はあってなかった様なもの。
正にキャンディが言った<奇跡>だと、私も思う。」
「ペイ・・・・。」
「だからこそ・・・・・・私は行く。
行かなければならない。
この事実を知る機械人間の私が。
キャンディ・・・・お願い。
その研究所の名と、場所を教えて。」
一度、目を瞑ったキャンディがゆっくりと開かせる。
「・・・・・・・・・・解ったわ。」
「僕も知る権利・・・・あるよね?キャンディ。
君と、ペイの事だもの。」
「ええ、メイジャ。」
迷いを振り切る様にして、
キャンディはメイジャとペイを交互に見つめた。
「いい?良く聞いて。
その研究所の名は・・・・・・・・・。」
その時だった。
"パーーーーーン!!"
何かの音がした。
今のは・・・・・・・・・・・銃・・・・・・・・・・・・・・・・・・声・・・・・・・・・?
「キャンディーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
メイジャの叫び声で、
我に返ったペイの瞳に映ったのは・・・・・・。
無惨にも躰の中心部に風穴を開け、
電流のショートによって、そこに突っ伏していた、
キャンディの姿だった・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
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