Act...11
「・・・・・・・・・・研究所よ。」
キャンディが重く言葉を発した。
「・・・・・・・・・・研・・・・究所・・・?」
「ええ。」
「そこは・・・・つまりキャンディ、
貴女の意識をその躰に移す手術をした所・・・って事?」
「そういう事に・・・なるわ。」
「あ、でもキャンディは、
自らの躰を助けてくれた人の元に居たって・・・ことだよね?」
「助けてくれた人・・・・・・・。
上手く言えば確かにそうかも知れない・・・・でも・・」
「・・・・・・キャンディ?」
段々とか細くなっていくキャンディの声に、少し不安を覚える。
「けれど・・・・あそこは決して優しさに溢れる場所ではなかった。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・詳しく・・・・教えて・・・・?キャンディ。」
不意に何かが気になった。
メイジャがキャンディを捜索している事を、
全て認知していたあの手紙・・・。
まさかとは思うけれど・・・・・・・いささか何かの関連が・・?
「・・・その研究所に着いて、
私は痛みに混乱する衝動を抑えきれなかった。
何人かの男が軽い鎮静剤を飲ませ、
とある人体固定カプセルに私を誘導した。」
「人体カプセル・・・!?」
メイジャが驚きに声を上げる。
「私は一度麻酔の様な物で意識を抑えられたから、
その時の具合までは解らない。
只、その時点で私に手術が開始された事だけは、
何故か気付いたの。」
「キャンディの手術は・・・・そこで取り行われたわけだね。」
こくりと深く頷くキャンディ。
「ただ呆然と頭の中が真っ白になって、
夢を見て眠っている気分だった。
自分が今どうなっていて、これからどうなるのか、
という予測さえしても無駄だと感じる程に、
心地よい空間に囚われていたの。」
「キャンディ、貴女の手術を担当した人は誰なの?」
私は何かの鍵になる事を願い、直接的に聞いた。
「私に手を施した人は、
その研究所では"ファーストドクター"と呼ばれている人だった。
まだ若くて細身でゆったりとした物腰の男性だったわ。」
「ファースト・・・ドクター?」
「他に2,3番目もいるらしいから・・・。」
「成程。」
「そのファーストドクターは、
どうにかして私の意識をこの器に移した後、
私からの質問を一切受け入れなかった。
真の名前、素性、年齢、出身等全て謎のままだったの。」
「・・・随分・・秘密主義ね。」
ペイが徐に口にする。
「そうね。
・・・でも何はともあれ、このままでは確実に死んでしまうという状況から、
新しい命を吹き込んでくれた事への感謝は大きかった。
例え姿形が変わっても。
けれど、だからこそ事実を教えて欲しかった。
それなのに、ファーストドクターは私がしつこく質問し続けると、
ある日から冷酷な対応になったの。
だから・・・・それ以上は怖くて追求出来なかった。
・・・・・ここが何処かという事も。」
ファーストドクター・・・・。
一体・・・・何者なの?
「けれど・・・本来ならそういった不可解な点から、
すぐに気付かなくてはいけなかったのかも知れない。」
苦悩する表情にみるみる変わっていくキャンディを気遣い、
優しくメイジャが質問した。
「どうして・・・そのファーストドクターは何も答えなかったんだろう?解る?」
「・・・・・・・・・・・・・。」
一瞬黙ってしまうキャンディ。
「キャンディ・・・?」
もう一度私が疑問符で問いかける。
「答えてしまうと・・・・・・全ての都合が悪くなるからなの。」
そう静かに言った。
「都合?何の都合?」
更にペイとメイジャが追求する。
「・・・・・・・・・・・・・・・私・・・・・・・見たの。
見てしまったの・・・・。」
「何を見たの?」
「感情と・・・性別を持たない・・・・・・・殺戮人間の・・・・・実験を。」
「・・・・・・・・!!?」
「殺戮・・・・・・・・人・・・・・間・・・・?」
退 進