Act...16


・・・その時。



「お取り込み中の所、申し訳ない。
しかし、どうやら話はケリがついたみたいだね。」



全く聞き覚えのない声が聞こえた。

「!?」

その声の主が「男」だと察したペイは、
瞬時にメイジャを後ろへ下がらせ、攻撃態勢に入った。

「まあまあ。そんなに構えないで貰えないかな。
別に傷つけようなんて気は微塵もないから。」

そう言った男は、ドアの端に手を置いて、
促す様にペイとメイジャを見て笑った。

微笑んだ・・・・・というより、面白がる感じの表情で。



「・・・・・・・貴方は・・・・・誰・・・ですか?」

メイジャが微かな声でその男に尋ねた。

しかし男から返って来たのは、
あまりにも引っ掛かる様な嫌味な物言いだった。

「礼儀がなっていないね・・・・。
人の名を名乗るときは、
まず自分からって教わらなかったのかい?」

「随分、不躾な言い方ね。
アンタこそ充分態度がなってないじゃない。」

ペイはメイジャを庇う様にして、会話に割って入った。



「おやおや。それは失礼。
そんなつもりはないんだけどね。」

突っかかろうとしても、
その微妙な笑顔は崩れない。

こんな時に・・・・・・・素性の解らない男が現れたとなると、
警戒せずにはいられない。

キャンディを狙う者達の一人であったら、
メイジャも危険になる。

「・・・・・・信用されてないみたいだねえ。
まあいい。僕の名はヘヴィレス。」

「・・・・・・・メイジャ。」

「・・・・・・・・ペイ。」

ペイ達は、どことなく疑心暗鬼を隠せないまま、名を呟く。



「メイジャに・・・・ペイ・・・・ね。
まあ、そう怯えないでくれないか。
なんせ、今、この近くで銃を発砲した人間は、
僕がとどめを刺したから。」



「・・・・・・・!!?」

メイジャが酷く驚く。

「アンタが・・・・・・?何故・・・・・・・・!?」

確かにペイの起こした火災発生機能が、
確実に届いているという確証はなかった。

しかし、相当な深手を負っていたのは解る。

・・・・・それに・・・・とどめを刺したのが・・・・この男!?




「何故って・・・別に大した理由なんてない。
只、僕は面倒な争いが嫌いでね。
特に機械を壊す事を楽しむなんて、
低次元な事をする、
くだらない価値観を持つ人材を放っておく事に、
憤りを感じたまでの事さ。」

「・・・・・・アンタ・・・・・何が言いたいの?」

ペイは、ヘヴィレスと名乗る男が淡々と話すのを、
遮る様に睨みをきかせた。



「まあ、要は僕の性格上、
気分を害する者にはそれ相応の罰を・・・・という事かな。」

「メイジャ・・・・・・。御免なさいね。
私が確実に仕留めておかなかった精で、こんな男に敵討ちを・・・。」

ペイは伏せ目ながら、メイジャに謝罪する。

「こんな男に・・・とは侵害だな。」

「い、いいんだよペイ!そんなに謝らないで!
ペイは充分に僕を守ってくれたもの!
・・・・・・・それに、ヘヴィレスさん・・・・・・・・?」

「ヘヴィレスでいいさ。」

「ヘヴィレス・・・・・・、貴方にも迷惑をかけてしまった。」

「メイジャ・・・・・!
そんな素性の解らない奴に・・・・・・いいのよ!」

ペイは、メイジャをヘヴィレスから放す。

「やれやれ。僕は相当疑われている様だね。
・・・・けれどメイジャ。
僕は別に君の為に殺しを実行したわけじゃない。
自分の自己満足の為だ。
そこの所は勘違いして貰いたくないな。」

「あ・・・・はい。御免なさい・・・・・・。」

「理解できたならいいさ。」

しれっとした態度で偉そうに話すこのヘヴィレスという男を、
ペイはどうしても信用出来なかった。



「・・・・・・・・・・・・・・・・役目を奪った自覚はないのね。」

「・・・・・・自覚・・・・・・・ねえ。」

ヘヴィレスはペイを見てにやにや笑う。

「・・・・・・・・何なのよ!」

「・・・・・・・・本当は復讐なんてさせるつもり全くなかったんだろう?」

「・・・・・・・・・っ・・・・・・それは・・・・・。」

「・・・・・・そうなの?ペイ?」

言葉に詰まったペイに、メイジャまでもが追求する。



「実際に敵対する人物に出会ったら、
彼ではなく自らが出向こうと思っているんじゃないのかい?」

「ペイ・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・。」

悔しいが、ヘヴィレスの言っている事は事実だ。

あれだけ眼前でメイジャの悲しみを痛感してしまったからには、
自分の様な状況に陥って欲しくはない。

メイジャには、
まだこれから沢山の希望を見通す道が用意されている。

荒んだ心を『当たり前』にしてはいけない。

・・・・だからこその決断でもあるのだ。

「ペイ・・・・・・・・僕の事を気遣ってくてるんだね。
本当に嬉しいよ。」

「メイジャ・・・・・・。」

「でも・・・・・・・・僕、言ったでしょう?
ペイがくれた助言を力にして"やらなければならない事がある"って。
キャンディの為に・・・・・僕がしてあげられる事は、
・・・・・・きっと何かがある筈なんだ。
それがどれだけ、重く、嶮しい事でも構わない。
そして・・・・・・・・・この想いをくれた・・・・・ペイ。

僕は君の力になりたい。」

「・・・・・・・・・・・有り難う・・・・・・メイジャ。」

「・・・・・・実にお綺麗な言動だね。」

「ヘヴィレス・・・・・・・。
アンタはそもそも何でこんな所に来たのよ。」

ペイは本来、追求しなくてはならない事に目を向けた。





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