=ACT 3=
「・・・・・馬鹿らしい。今更何思い出してんだ俺。くだらない。」
ぼそりとそう呟くと、ただひたすらにベットの中でごろごろと動き回る。
風の音が窓を揺さぶり、剱司の耳を汚す。
「・・・・・?」
するとドアの部屋向こうから、本日2度目の音が聞こえた。
(・・・・また来たのか)
剱司は溜息をつくと、またすぐに階段を駆け下りて行く母親の足音を聞き終えてから、
部屋の扉をほんの少し開けた。
するとそこには少し大きめの小包らしきものが置いてあり、
音を出来るだけ立てない様に、部屋の中に引き入れた。
「・・・・?・・・何だこの荷物。俺こんなもの頼んだか?」
剱司はその小包を目の前にして、じろじろと眺め始めた。
しかし、宛先の明記がなく、そこに書かれてあったのは【矢凪剱司様】という名前と住所だけだった。
「・・・・変なものじゃないだろうな?」
不振に思いながら、ダンボールの箱の開き口に手をかけようとした剱司だが、
その瞬間あることに気付いた。
「・・・・・・・!!」
すると、剱司はは即座に白紙の紙につらつらと書き殴り、それを扉の下から外に通すと、
渾身の力で扉を蹴飛ばした。
その途端物凄い音が響き、下の階で悲鳴をあげた母親が急ぎ足で駆け上がってくる。
母親が扉の前に来た気配を剱司は解った。
『人の物を勝手に開けるな!』
紙にはその内容が掲載されている。
剱司は両耳を抑えた。
扉の向こうから嬌声の様な叫び声と、泣き声が聴こえたからだ。
・・・・それでも剱司の母親は部屋に声もかけず、扉に手をかけることなく降りていった。
ようやくその声が静まり返ったと同時に、剱司は扉を背にしてずるずると尻持ちをつく。
「いつものこと・・・・・・イツモノコト・・・ダ。」
呪文の様に自分に言い聞かせ、目を閉じ天井を仰ぐ。
・・・・・その小包は、一度開封されてからもう一度修正して締められた形跡があった。
完全には開封せず、途中までラベルを剥がした後が残っている。
剱司はそれにすぐに気付いてしまっていた。
『母親が監視をするかの様にそれを覗き見しようとした』・・・その事実を。
「・・・・・そうするのなら・・・なんで・・・っ!!」
剱司は戸棚の扉を拳でもう一度叩くと、
呼吸を整えるかの様にして、その小包をもう一度ゆっくりと開封した。
「・・・・何だこれ?」
剱司が開封した中を覗いて見ると、そこには外観の大きさとは明らかに違うものが入っていた。
「・・・・手紙・・・・・・?」
そこには真っ白な封筒が入っており、封の開け口は青い薔薇のシールで止められていた。
ゆっくりと手を伸ばしそれを手に取ると、剱司は裏を返す。
すると右隅に、『G』というローマ字だけが刻まれていた。
不思議に思いながらも、興味本位の方が勝ったのか、剱司はそのままそれを開封し中身を見る。
「・・・・・?」
その中には、ただ一枚だけのカードが入っており、パソコン文字でこう打たれていた。
『想像者よ
望みを叶えるべき元へ馳せ参じたまへ』
「・・・・・これ・・・だけか?・・・・・ん?」
文章を見た剱司は、その裏に何か感触がある事に気付いた。
メッセージカードをひっくり返すと、そこには一つの鍵がくっついていた。
「・・・・?何処の鍵だ・・・・・?・・・・・そもそも・・・・何なんだこれ。」
テープを剥がすと、その銀色の鍵はそのまま床に落ちた。
無意識にそれを拾って手に取ると、その途端に剱司の傍らにあった携帯の着信音が鳴った。
静かな部屋で鳴り響いたそれに一瞬反応した剱司はそのまま携帯を開く。
「メールか・・・・知らないアドレスだな・・・・・・・ん?」
『銀の鍵を持ち
示す場所へと来たりて・・・・・・・・・今を壊す術を 【G】』
「・・・銀の鍵・・・・・・・・・って・・・・まさか!」
剱司が手に持っていたその鍵の色こそ、まさに「銀」であり、
カーソルを進めたその下に、とある住所が掲載されていた。
剱司はそれを交互に見て、暫し無言になった。
(・・・・・どういうことだ?・・・・鍵に触れた途端に携帯にメールが届いた。
それに・・・・・この文章・・・・・・。G・・・って・・・・何だ?)
「どうして・・・・・俺の所にこんなものが?」
もう一度小包の宛名や中身を確認してみるが、空欄のままで何も手掛かりになりそうな要素はなかった。
訳が解らない気持ちを抱えたまま、再びベットに背中を預け、
送られてきたその意味不明なカードと鍵を額に掲げる剱司。
「・・・・・・・・・今を壊す・・・・・・・術・・・・・か。」
剱司はそう呟くと、指定された時間が夜中である事に気付き、何らかの決意を固めた。
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